宮島の対岸、宮島口は広島市内から電車で1時間くらい。そこに新進気鋭のフレンチができたらしい。
この情報は今のところ地元より、むしろ全国的な「その道」の人達に出回っている模様だ。
AKAI。
宮島口の駅からも歩いて10分ほどかかる。
そして看板も出ていない古民家だ。近づいても「一体どこに?」な感じだが、中に入ると見事にモダンなレストランになっている。
オーナーシェフは36歳。U-35という若手シェフの全国大会で優勝し、一月半前にこのお店を開いた。
経歴は一筋縄ではない。家族を置いてフランスで修行し「もっといたい」ところで帰国。そして量販店などでも働き資金を貯めた。
いわばこのお店は彼のデビュー戦である。
ウニ・じゅん菜・アサリの出汁の先付。
味が、イメージと違う。あれ?と思う。
牡蠣・仔牛などのセコンド。
これも、ん?精密で美味しいけど、先入観とは全く違う、淡白で静かな味わい。
のっけから派手に打ち合うのではなく、トータルにバランスして穏やかに初手を繰り出す、とても印象的なイントロ。
おそらくこの辺で我々の反応を見ながら、徐々にメインの按配をはかっているのだろう。
スズキや鯛は、炭火でローストした、素朴な焦げがたまらない。
木下牛。驚く。
聞けば先日行った富士宮の「Bio-s」もご存知。
新しい才能達が、地方の更に先の土地で始まっている。
AKAIさんは若い。しかし、デビューとすれば遅いかも知れない。そして道のりも一直線ではなかった。
この寡席なお客さんからの反応だけでは今後インプットは不足するのだろう。
しかし「予約ない時はガンガン人に会いに行く」という行動が身についている。
地元にこだわり、そこから知識を広める。
むしろ一途に職人的に料理に向き合ってきただけでない、色々な視野から生まれたトータルなバランス感覚。それがこのお店の未来を広げていくのだろう。
たった3人のキッチンで作り出すライブが、すごく独創的で、新鮮で、素晴らしいお店だと思う。